- ●妻沼聖天山 歓喜院
- 所 在 地:埼玉県熊谷市妻沼1511
工事名称:重要文化財 歓喜院聖天堂 保存修理工事
※平成24年7月9日歓喜院聖天堂は国宝として指定されました。
工 期:2004年9月~2010年9月

施工後

今回360°パノラマに掲載されている建物は、2010年9月に竣工した、埼玉県の北部、熊谷市(旧大里郡妻沼町)に鎮座する、妻沼聖天山歓喜院の御本堂です。
1744年(延享元年)に着工し1760年(宝暦10年)に建立したこの建物は、奥殿から中殿にかけて、一部の隙も無い日光様式の彫刻と加飾が施されております。当地が埼玉日光と呼ばれる由縁の建物であります。
建立後、約260年間、美術的な維持、補修が行われないまま、今回の保存修理を迎えることとなりました。
立地環境は、夏は猛暑に加え、近くを流れる利根川より影響される多湿な環境と、冬は赤城山から吹き下ろす乾燥した埃混じりの強風が、長い年月と共に建物表面から当初の美しさを奪い、面影を一部に残すだけとなっておりました。
弊社の作業は2004年(平成16年)9月より着手いたしましたが、当初3年間は、痕跡の調査、分析、検討を中心に行いました。そこから紐解かれた内容は、日光の建物群に点在する漆塗、彩色の技法をこの建物ひとつに凝縮した、まさに宝箱のような建物でした。
多種多様な技法が解明されことに合せ、260年ぶりの化粧直しということが、さらにこの建物を難題としました。
漆塗では、木地が風化し凹凸の著しい彫刻、連続文様を当初のように滑らかな面で再現するため、耳かきのような道具を用い、幾日も同じ彫刻と向き合いました。また、通常建物では使われることの少ない、黄色、緑といった色が、黒、朱、赤(弁柄)、うるみ、金に合せて施されており、罫書や暈しといった漆塗では非常に珍しい、彩色的な技法が取り入れられております。
彩色では、当初の痕跡を残すため、将来、現状の顔料を残して剥離することのできる和紙貼りを行うという、新しい工法を施して復元をいたしました。また、同じ顔料であっても、場所により数種類を使い分けて表現されていたことから、30余りの絵の具を用い細かな配色で復元されております。
錺金具では、以前の屋根替に取り外されたまま戻されなかった物を、当初の通りに復原いたしました。通常、非常に目立つ存在の金具が、加色と調和し表現されていることが、この建物の荘厳さや華麗さを物語っております。
弊社は、日光二社一寺をはじめ、全国の社寺の保存修理に携わる機会を頂き、研鑚を行っております。着手より6年間、この建物に携わることが出来、更なる経験と自信を頂くことが出来ました。
- アクセス:
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- 自動車
- 東北自動車道館林インターより約40分
- 関越自動車道東松山インターより約50分
- 公共交通機関
- JR高崎線・熊谷駅よりバスで約25分バス停「聖天前」下車後徒歩1分
- あさひバス(太田駅行き・西小泉駅行き・妻沼聖天前行き)が利用できます