重要文化財

大井俣窪八幡神社

おおいまたくぼはちまんじんじゃ

所在地:山梨県山梨市北654

工事名称:大井俣窪八幡神社 本殿ほか2棟 塗装、錺金具工事

工期:2012年6月1日~2012年12月31日

丹塗 漆塗 彩色 錺金具

山梨県山梨市にある「大井俣窪八幡神社」(窪八幡)は、清和天皇の勅願により859年(貞観元年)に宇佐神宮(大分県)の八幡三神を勧請して以来、千年を超す歴史を有し、中世には甲斐源氏、特に武田氏代々の氏神として崇敬されました。

境内には室町期に、武田信虎・晴信(信玄)父子をはじめとする武田氏により再建・改修された社殿が現存し、日本最大の十一間社流造(じゅういっけんしゃながれづくり)本殿、現存する最古の木造鳥居を含む9棟11件が、重要文化財に指定されています。

今回の工事は、御本殿の弁柄丹塗・墨塗を中心に、彩色見取りおよび剥落止め、錺金具、破風(はふ)漆塗を行いました。

丹塗の修復は、旧塗膜を前鉋(まえがんな)などを用いて、木地を傷つけないよう手作業で丁寧に掻き落とし、その後平滑な下地を作り、塗りムラが無いよう均一に下塗、上塗と仕上げていきます。弁柄と丹を合わせたものに膠(にかわ)を混ぜ、旧塗膜に色合わせし塗料を作ります。鉛や鉄を主原料として作られた弁柄や丹は、重たく混ざりにくい為、力を込めて塗り上げました。現代の樹脂系塗料とは違った風合いや質感があり、弁柄丹の赤と墨塗の黒がバランスよく配色され、屋根の破風の漆塗の艶がアクセントとなっています。

彩色見取りおよび剥落止めは、御本殿正面の脇間全6面の板壁障壁画および両側面脇障子を行いました。当初の痕跡を残すことを目的とし、調査・見取り・剥落止めを行いますが、斜光ライトにより在来彩色図文様等の調査を行いました。現状の絵自体は表現も細部までしっかり描きこまれ、画題と呼応、阿吽などの狩野派の約束事で描かれているので時代は特定出来ませんが、使用されている絵具から、文化文政期より以前の狩野派を学んだ絵師の手によるものと思われます。

在来彩色図文様

イ.身舎(もや) 東面(向かって右)脇障子
昇り龍(阿形)三ツ爪
ロ.東殿 右脇間
麝香猫(じゃこうねこ)、唐松に尾長鳥
ハ.東殿 左脇間
麝香猫親子、竹に椿
二.中殿 右脇間
竹に番(つが)いの鶴、長春(薔薇)
ホ.中殿 左脇間
唐松に鶴亀、芙蓉に小禽(しょうきん)
ヘ.西殿 右脇間
竹に虎、唐松、蒲公英(たんぽぽ)
ト.西殿 左脇間
竹に虎の子育て(子虎三頭)
チ.身舎 西面 脇障子
降り龍(吽形)三ツ爪、玉を持つ

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