重要文化財

一ノ宮貫前神社

いちのみやぬきさきじんじゃ

所在地:群馬県富岡市一ノ宮1535

工事名称:一ノ宮貫前神社 本殿・拝殿 保存修理工事

工期:2010年7月~2013年5月

漆塗 彩色 錺金具

「貫前神社」は、群馬県富岡市上州電鉄一ノ宮駅の西およそ1km、蓬ヶ丘の北側斜面、綾女谷という渓間に鎮座し、約1400年の歴史を持つ上野国(群馬県)一之宮です。

春には桜が咲き誇る急峻な参道を、大鳥居へと上ります。石段を上った総門の先は下りとなっており、鳥居より低地に社殿があるという配置は全国的に珍しく、『下り宮』と呼ばれます。諸説ありますが鵜戸神宮(うどじんぐう)(宮崎県)、草部吉見神社(くさかべよしみじんじゃ)(熊本県)と並び「日本三大下り宮」のひとつとされています。

本殿・拝殿ともに、建物内外部全面に漆塗や極彩色が施されており、本殿は「一重二階」、内部が2階建ての独特な構造となっています。内々陣といわれる2階部分に御神座があるその構造は「貫前造」とも呼ばれ、貫前神社特有の建築様式といえます。今回の工事では、本殿および拝殿の漆塗、彩色、錺金具を担当しました。

本殿の垂木は弁柄朱漆(べんがらしゅうるし)塗、縁下は弁柄漆塗、ほかは黒漆塗を施しました。垂木の弁柄朱は経年により、朱の色が鮮やかになります。

入母屋妻、垂木下より内法長押(うちのりなげし)までを彩色、ほか脇障子彫刻を施工しました。蟇股(かえるまた)・手挟み・向拝獅子頭・脇障子は彫刻彩色で、丸桁(がぎょう)の龍および柱金襴巻(きんらんまき)は丹の具による置上(おきあげ)彩色です(置上彩色とは、丹の具で各部位(例えば、丸桁の龍の鱗)を盛り上げることにより立体感を生み出す技法です)。各彩色は木材の経年劣化等による表面の凹凸等を漆の下地によって平滑にして、その上に彩色を施しました。

錺金具は屋根廻りおよび扉は水銀鍍金、他は金箔押(漆箔)です。水銀箔(仕上がりは、やや青味を帯びる)と漆箔(赤黄色い)を併用し、垂木や裏甲(うらごう)および紋章等は墨差しで文様が目立つようにしています。

拝殿の垂木は弁柄朱漆塗、内法長押より下は弁柄漆塗で、破風(はふ)・建具(たてぐ)・脇障子は黒漆塗です。彩色は入母屋妻、垂木下より内法長押を施工しました。蟇股は彫刻彩色となり、妻羽目には獅子と牡丹が描かれ、内法長押上の小羽目にも絵画が描かれています。下地は本殿同様、漆です。

錺金具は金箔押(漆箔)とし、本殿同様部分的に墨差しを施しました。拝殿内部は漆と彩色の一部保存修理を行いました。

檜皮(ひわだ)屋根葺替工事および仮設工事、大工工事等は田中社寺(株)(岐阜県)による施工です。

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