日光東照宮(螺鈿鞍)

にっこうとうしょうぐう らでんくら

所在地:栃木県日光市山内2301

工事名称:日光東照宮 螺鈿鞍 四百年式年大祭奉納

工期:2014年~2015年

美術工芸

日光東照宮四百年式年大祭にあたり、10名の職方が「螺鈿鞍」の制作を担いました。約1年をかけて奉納が叶い、またとない貴重な体験になりました。

和鞍(わぐら)とは
古墳時代の4世紀後半から5世紀にかけて家畜化された馬が伝来し、馬具も日本列島へもたらされました。古墳の副葬品として、金属製の馬具が出土しており、馬を形象した埴輪馬には各種の馬具を装着した姿が表現されています。奈良時代に大陸からもたらされた唐鞍が原型となり、和鞍は、以降世界の騎馬文化に類を見ない洗練された形状に変化しました。

奉納鞍について
馬具は刀剣類と同様、神聖な意味を帯びた道具として数多く遺されています。しかし、伝統騎馬文化の衰退により、今では古い鞍が祭礼や神事に僅かに使われるのみで、伝統的な和鞍を作る技術はほぼ絶滅しました。馬具の一部に留まらない優美な姿を備えた和鞍を、日本文化の象徴的な意味を持つ存在として永く受け継いでゆきたいと願い、今回の制作に至りました。

【木地】
現在、日本で本格的な和鞍木地を制作している鞍師がいないため、木地の制作から難航を極めました。古文書を紐解き、実物を解体して調査するなどして、古式同様、固くて粘りのある桜材から削り出しました。すべてが複雑な曲面で構成された鞍木地は、最高難易度の木工技術が必要でした。

【螺鈿(らでん)】
一般的な螺鈿はアワビ貝を使用しますが、「螺」は巻貝を意味する文字で、古式では夜光貝という巻貝を使用します。夜光貝は南西諸島に生息し食用として一般的な貝ですが、その利用は古く縄文時代までさかのぼることができます。アワビ貝に比べて加工はしづらいのですが、真珠光沢が強い特徴があります。

【錺金具】
前輪(まえわ)と後輪(しずわ)に打った葵のご紋は、銀材に鏨(たがね)で彫刻し、金鍍金(きんめっき)を施しています。葵のデザインはさまざまありますが、今回は寛永期のやや古風なものに倣って制作しました。

【金地】
すべての木口に漆塗を施した後、螺鈿の効果を引き締めるため、純金粉で金色を施しました。居木(いぎ)裏の銘文は、江戸期の大名による奉納銘文を踏襲しました。

このページを共有する