重要文化財

久能山東照宮

くのうざんとうしょうぐう

所在地:静岡県静岡市駿河区根古屋390

工事名称:久能山東照宮 金溜塗具足・白檀塗具足・具足櫃(きんためぬりぐそく・びゃくだんぬりぐそく・ぐそくひつ) 保存修理(桐製保存箱調製)

工期:2015年4月22日~2016年3月31日

美術工芸

【金溜塗具足・白檀塗具足】
金溜塗具足は1559年(永禄二年)、織田信長と今川義元が合戦の時、包囲された今川方の大高城へ兵糧入した初陣の徳川家康が着用した具足(甲冑)です。ほとんど同様の仕立てで、白檀塗具足は替具足として作られたものであり、若き名将が着用したことの明確な当世具足として、大変貴重なものです。

具足櫃は当世具足をおさめる箱で、やや梯形(ていけい)の印鑑蓋造、表は金梨子地に牡丹唐草文を金銀蒔絵であらわし、各面の中央には三葉葵円紋を蒔絵し、要所には水銀鍍金(めっき)の魚子地唐草文毛彫入りの金具を打っている。(毎日新聞社刊「新指定の重要文化財」より)。

金溜塗・白檀塗具足は、総体に鉄媒染(てつばいせん)に起因する黒絹の経年劣化が著しく、縅糸・家地は大破。緒・紐が欠失していました。後世修理によってかろうじて体裁を留めているものの、絹糸や漆塗膜の脆弱化によって陳列・収蔵等の移動には耐えられず、具足櫃は、漆塗膜の随所に剥落・剥離・浮遊箇所が見られ、さらなる剥落の危険性が高い状態でした。

今回の作業では、構造、塗膜の安定化と美観の向上を主眼とした文化財保存修理的手法による処置を施し、本件の資料性を最大限尊重して不用意に新たな解釈は付け加えないものとしました。

【具足】解体し、兜・面頬(めんぽお)・籠手(こて)・佩楯(はいだて)・脛当ての縅替えや補強、新補をして、漆工で漆塗膜の強化、欠失部の整形、金溜塗(きんためぬり)の繕い、洗浄を行いました。そのほか、具足掛けや兜掛け、家地等の残欠を収納する桐箱を新調しました。

【具足櫃】解体、洗浄し漆塗膜を強化、劣化した塗膜に生漆や透漆を塗布し拭き取る処置を行いました。欠失部に漆を用いて含浸強化した後、錆漆を充填して整形しました。梨子地欠失箇所は、近似した純金梨子地粉(3~5号粉)で周囲の密度に似せて蒔き、薄く透漆を塗り重ねて色調を合わせました。金地欠失箇所は消金粉を用いて繕い、透漆で固めるなど、古色を施しました。

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