うるし生産

弊社は2016年(平成28年)に国内最大の生漆生産地である岩手県二戸市に二戸支社を設立。漆掻き職人の育成と未来の資源造成に取り組んできました。木を植えて、育てて、漆を採って、塗る仕組みを構築することにより、国産の漆塗が栄えるように励んでいます。


数十年周期で行われる文化財装飾の修復のためだけではなく、建造物の歴史的・学術的価値や、その意匠・技術を次世代に繋いでいくためにも、原材料生産を含むサプライチェーンの確立と維持は不可欠です。


里山にウルシを植えて育て、漆掻き職人が生漆(きうるし)を採るところから漆工が始まるといえます。

文化財と日本産生漆

日本産生漆の自給率はわずか8.5%(令和3年現在)ですが、約8割が岩手県二戸地域で生産されています。
旧町名を冠して「浄法寺漆(じょうぼうじうるし)」と呼ばれ、専門の漆掻き職人によって手作業で採取しています。


かつては市場が縮小し、高齢化と後継者不足が深刻でしたが、2015年(平成27年)3月に文化庁から「国宝・重要文化財修理では原則日本産漆を使用する」という通知が出されて以降、生産者団体や地元行政等の尽力によって、大幅に増加した需要に応えるための後継者育成と若返りが図られました。


弊社も責任ある業界最大手として、地元出身者をはじめとした漆掻き職人の雇用と育成に励み、地域生産量の下支えに全力で取り組んでいます。

漆掻き

日本の生漆生産は、職人が専用の刃物でウルシ(原木)に傷をつけ、滲み出た生漆を採り集める採取法で行われています。傷の溝に溜まった生漆をヘラで引っ掻くように採ることから「漆掻き」と呼ばれます。


植栽から10~15年が経ち、一升瓶の太さ以上に育った原木を入梅のころから傷をつけはじめ、落葉するまでの間に生漆を採り尽くします。
一本の原木に対しての漆掻きは一度限り、かつ原木一本で200~300グラムしか採れない希少な天然材料です。
漆掻きを終えた原木は伐採しますが、切り株から萌芽肢(ぼうがし)が盛んに株立ちするので、これを仕立てて約10年後に再び漆掻きをします。


選定保存技術の「日本産漆生産・精製」は、2020年(令和2年)に「建造物装飾」などとともに、国際教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されました。

原木資源造成

良質な生漆生産には、健全な原木資源が不可欠です。
弊社では、苗木づくりから植林後の保育管理まで、一貫した資源造成に取り組んでいます。2023年(令和5年)現在、1万本以上のウルシを栽培しており、今後も植栽を継続していきます。


前年に漆掻きした優良な原木から種子を採取し、定植後の活着と初期成長が優れた自社開発のコンテナ方式で苗木を育てています。
ウルシは農地植栽が可能(※)なことから、里地里山の保全活用に貢献すべく、また、保育作業の機械化が見込める遊休農地を中心にウルシ林造成を行っています。


当社直営で保育管理することで、データベース化をはじめとした安定的かつ継続的な資源純化の仕組みを構築。ウルシ栽培は林業技術上、未解明な部分が多いことから、大学等の研究機関と共に各種調査・研究にも取り組んでいます。
※ウルシの農地植栽は継続した肥培管理を行うことが要件とされ、地域の農業委員会や隣接土地所有者の事前了解を得る必要があります。